ネオたぬ記

読んだ本の感想。見聞きしたこと。

北海道を味わう

持病の治療のために本来なら今頃入院している予定だったのですが、使う薬に不具合があったというよくわからない理由で入院前日の夜遅くに急遽入院が中止に。入院期間の一時保育先やら、ベビーシッター雇うかどうかやらてんやわんやで準備を進めていたのに。治療、早めにやれるといいんですが、まぁこれはもうなるようになるしかない。育児については近くで1時間でも子ども預かってくれる友達とか住んでたら便利なんだけどなぁとか思いますが、大体古い付き合いの頼れそうなやつは遠くに住んでいたりするのです。

 

で、入院するはずだった日、一時保育の予約を既にしていたので朝子どもを預け、その後一人で近くのお店に。いやぁ、読書がはかどった。久しぶりの一人時間。

妻とこんなLINEをしました。

自「○ちゃん(子ども)いないと寂しいけど、でも一人だと作業がはかどるねぇ!」

妻「そうだね。寂しいね」

うむ、かみ合ってるようでかみ合ってない。まぁ妻の気持ちもわかる。アンビバレントです。

 

ともあれそんな感じで、想定外に最近のなかでは比較的本を読めました。お世話になってる先輩から絵本やら小説やらいろいろ送ってもらったのですが、そのうちの一冊、小泉武夫『北海道を味わう 四季折々の「食の王国」』がなかなかよかったです。北海道は縁のある土地。妻のルーツの土地であり、義父、つまり妻の父は北海道のお寺で住職をしています。スーパーおじいちゃんっこ・おばあちゃんっこであった妻は幼稚園児のころから長期の休みになると一人で北海道の祖父母の家に行き、休みを過ごしていたといいます。

本書では著者が情熱的な表現と独特の擬音を駆使しながら、数十年かけて食べ歩いた北海道の食べ物を熱く語ります。一番最初のニシンの話からがっつり心つかまれた。僕別にニシン好きでも嫌いでもないんですが、なんか読んでるとめちゃくちゃ美味しい魚な気がしてきます。その他、ホッキガイ、トキシラズ、行者ニンニク、北海シマエビ、ウニ、カニ、キンキ、シカ、ジャガイモ、トウモロコシ、さらにはジンギスカンやラーメンなどなどなど。とにかく紹介される食べ物がすべて美味しそう。例えばニシンの刺身一つ食って以下のような感じです。「口に入れた瞬時、ヤマワサビの快香が鼻から抜けてきて、口の中ではニシンの刺身のポッテリとしたやさしく柔らかい身が歯に応えてホクリ、トロリとし、そこからまろやかなうま味と耽美な甘み、そして脂肪からのペナペナとしたコクなどがジュルジュルと湧き出してくる。それをヤマワサビのツンツンと醤油のうまじょっぱみが囃し立てるものだから、たちまちにして私の大脳皮質の味覚受容器は充満するのであった」。世の中には自分など足元にもおよばぬ食いしん坊たちがいるものだなぁ。

しかし、この著者の魅力的な語りにすべて乗っかるわけにはいかぬ。例えばニシンの糠漬けを焼いたもの。著者曰く、「実にうま味と酸味が濃く、塩も角が取れておだやかになっていた。……また、発酵によって生じたさまざまな微量成分が、焼くことによって成分変化を起こし、食欲をそそる香ばしいにおいを発生させるので、私はその匂いだけをおかずにして飯が食えるのではないかと思ったほどであった」。でも実はこの食い物、妻の祖母が送ってくれたものを食べたことがあって、自分にはさっぱり口に合わなかったのです。一口食べてパス。よく考えたら僕、キュウリの糠漬けですら古漬けは苦手なんだった。うまみが強かろうがまろやかだろうが、においが強かったり酸味がきつかったりするとあんまり食えないんですよねぇ。発酵学者である著者に聞かれたら憐れまれそうな味覚をしております。納豆とチーズはきつくないやつなら好きです。味噌はなんなら自分で作ろうと思っている。

 

ちなみに縁がどうのといっておきながら、自分は義父、つまり妻の父とは会ったことがありません。別に関係は険悪ではないのですが(というか会ってないので連絡先もきいてないし喧嘩もできない)、結婚式とかもしてないので単純に会うタイミングがないまま今に至っています。僕も気にしていませんが、妻曰く義父も特に気にしていないとか。「○○(妻)ちゃんがいいならなんでもいいよ~」みたいな感じらしいです。地方名望家(お坊さん)なのに。多様な家族の形態が実践できていて大変良いことですね?

でもそのうち(北海道を味わいに行くついでに)会ってきたいとは思っています。

あと、どうでもいいですけど北海道から東京に出てきた知人がそれなりにいるのですが、変な人率がとても高いです(褒めてます)。なぜだろう。