ネオたぬ記

読んだ本の感想。見聞きしたこと。

シャチが好き

昔から大きな生き物が好きでして。ゾウ、クジラ、今はいないけど恐竜。でっかい生き物が動いてるだけで感動します。

で、そんな中でもシャチはかなり好きです。大きくて賢くて機能的で。鴨川シーワールドのシャチなんか、もう何時間でもみてられそうです。沖縄の水族館でみるジンベイザメも好きですがシャチはあれとはまた違うジャンルの違う、大きな哺乳類の迫力です。

 

動物関連の書籍は小学生くらいからわりと好きで読んでいるのですが、社会性の強い動物の本は読んでいて特に面白い。

そんなわけで村山司『シャチ学』も楽しく読みました。著者はイルカの研究者のようで、シャチの親戚であるイルカ(ともにハクジラ類)が比較対象として論じられていること、アイヌや近代水族館など人とのかかわりが描かれている点が特徴的だと思います。

 

シャチについては少しは知ってるつもりでしたが、改めて本でまとめて学ぶととても面白い。

現在、ひとくくりにされているシャチには様々な形態、食性、行動などの異なりがあることが明らかにされています。例えば北東太平洋海域のシャチは、

レジデント=魚食性で平均10体以上のグループ(ポッド)を形成して定住。

トランジェント=特定の生息域を持たず、数個体の小集団をつくってイルカ類、クジラ類、アザラシ類などを狙う。

オフショア=サメなどを主に食し、50~100個体程度の群れをつくる。

この3つに分類されます。しかも、これらは見た目も微妙にことなっているほか、鳴き声の出し方もちがったりするそうです。多くの個体が集まるレジデントは頻繁に鳴き声を発してコミュニケーションをとるのに対し、トランジェントはあまり鳴き声を発さないなどの違いも。

またシャチはコールとよばれる「方言」のようなものがあり、これは各ポッド(家族)の中で共有され、母から子へ代々伝わっていきます。血縁関係が近いほどコールは共有され、ポッドが集まる「クラン」ではコールは共有されるが、異なるクランの間では音は共有されていないそうです。ほんとに言語って感じですね。

 

また、シャチといえばその高い知能に基づいた様々な狩りが有名で、本書でも様々な狩りが紹介されていますが、知らなかった話をひとつ。

アルゼンチンのバルデス半島のシャチは浜辺にいるオタリア(アシカの仲間)に海の中から襲いかかる狩りを行います。海の生き物であるシャチは浜辺に乗り上げてしまって、海に戻れなくなったりしないのか?と当然思うわけですが、なんと驚くことに、オタリアを狩る前に数キロ離れた浜辺でシャチがこの狩りの練習をしているらしいのです。オタリアもいない浜辺で干潮時に浜に乗り上げ、そして海へ戻る。シャチの子どもに対しては浜辺に押し上げて戻る練習をさせているそうです。干潮時に行っていることについては、著者は万が一座礁した場合に備えて、潮が満ちれば海へ戻れることを計算しているのではないか、と述べています。「特訓」って感じです。また、かつてこの地域にいた兄弟のシャチは、一匹が浜辺に奇襲をしかけ、もう一匹が海に逃げてきたオタリアを待ち構えて襲うという分業をおこなっていたとか。

 

おそろしく知的な生き物です。ちなみに鴨川シーワールドのシャチを見たときに印象的だったのは、シャチがパフォーマンスを見せた後、その都度ご褒美のえさをもらうのではなく、何回かパフォーマンスした後にまとめて魚をもらっていたこと(同じ施設のイルカはもっとこまめにえさを与えられていた)、また一通り終わってから飼育員たちに長時間頭をなでられていたことです。

人の言葉とか理解してそう。